ハクキンカイロは3シーズンで綿を交換しろと言っていますが、現代のちゃんとした燃料を使っていれば10シーズン以上使っても綿はだめにはなりません。古い機種を自力で修理するときなどのためにやり方をご紹介します。
タンク内にベンジンが入っていない状態で(完全に発熱し終えた状態で)最大容量(PEACOCKならベンジンカップ2杯)のベンジンを入れ、逆さにして搾ったときにベンジンが出てきたら綿の寿命です。
使用しているうちにクチの近くの綿が茶色っぽく変色するのは、火口から出る熱のためです。変色しているのはクチのまわりだけで、内部の綿は白いままです。放っておいても何の問題も生じませんので綿を交換する必要はありません。
これがハクキンカイロ純正の取換綿です。取り換えにはピンセットを使います。
中身はこんな感じになっています。
でも今回はあえてこの純正取換綿ではなく、身近な材料で交換してみようと思います。
写真A
3Rのタンクです。綿はこの中でA,B,Cの3つに分かれて入っています。
ピンセットを使って、Bの綿をゆっくり引き出します。むしりとってもかまわないのですが、なるべく形を崩さないようにしたほうが、あとで詰め込む綿の量がわかりやすいと思います。
下の写真くらいまで綿が出たら、あとは手で引っ張り出します。
綿Bが出たら次に綿A、綿Cを取り出します。
左から、綿A,綿B、綿Cです。綿Bだけは型崩れ防止用に厚紙でホッチキス止めしてあります。
綿を抜くのに成功したら、いよいよ詰め替えの開始です。使用したものは次のとおりです。
左上から順に、ピンセット、脱脂綿(白十字製)、ハサミ、厚紙(1cm×10cmに切ったもの)、そしてホッチキスです。
ホッチキスと針は、ちゃんとしたメーカー品を使ってください。メーカー品でも、デザインとかに凝ったやつじゃなくて、この無骨なMAX HD-10Dというものが一番具合がよかったです。(店頭販売時の型番は、MAX HD-10DKです)可能なら、純正取換綿で使われているのと同じ3号針ホッチキスを使用してください。
カットメン(カット綿)という、あらかじめ細かく切った脱脂綿が多く売られていますが、薬局・薬店で売っている塊のもの(実際にはシート状になっている)のほうがおすすめです。カット綿だと綿がタンク内でずれたり外れて落ちたりする可能性があり、重量も純正取換綿と同量を計るのが結構難しいです。(もっとも、ハクキンカイロの純正取換綿も、今は塊の脱脂綿ではなくカットメンを使っているっぽいですが....)
薬局で脱脂綿を買ってきて、最初に入っていた3つの綿の固まりとほぼ同じものを作ります。綿は結構詰め込んでありますので、カイロの大きさに合わせて新しい綿を準備すると少し足りません。といって、あまりにもぎゅうぎゅうに詰め込みすぎると、逆にベンジンの入る余地がなくなってしまいます。取り出した綿とほぼ同量が入るようにしてください。なお、綿の量は、乾いた状態で、厚紙、ホッチキスの針別で4.9g程度のようです。とはいっても、そういう微妙な量は、家庭用のはかりでは量るのが困難です。その場合、たとえば、50g入りの脱脂綿を面積でだいたい10等分にする、などの方法をとるとよいでしょう。
白十字社の「脱脂綿50g」または「脱脂綿100g」を使用します。100gのものは、50gのものが2枚入っています。
※パッケージには、縦40cm×横60cmで50gである旨の表示があります(2024年現在)。しかし、実際に測ったところ、縦43cm×横56cmでした。(以前購入したものは40cm×60cmでした)
ひょっとすると、今も「正式な」40cm×60cmのものも製造されているのかもしれません。そこで、どちらのロット品でも平気なように、説明を少々変えました。
写真は、白十字製の脱脂綿50gを使ったときの例です。
この面積で50gですから、4.9gというとだいたい10分の1くらいになるはずです。面積で計算して、縦を半分にして、横を5等分すると5gになります。元の綿よりも少し多めですが、誤差の範囲内でしょう。気になるようなら、端を2mm分くらいけずります。
他社製脱脂綿で同じようなシート状で同じ50gのものならば、この方法が使用できます。
※もし1枚丸々のものが手に入らなかったときは面積235平方センチ程度で縦横比はだいたい2:1になるように切ります。
参考のため、だいたい235平方センチになる切り方としては
12cm×20cm
11cm×21.5cm
10cm×24cm
くらいになります。ただしこれはあくまでも白十字社の脱脂綿50gまたは100g(100gものは50gのもの2枚入り)を使ったときだけです。他社のシート状製脱脂綿は縦横比面積等が異なりますので、計算して縦横比を出すか、1枚丸々を10等分する方法を使ってください。
切り取った綿の長い方の辺を3つに折りたたみます。高さ7.2cm×幅11cmくらいになります。切り方やたたみ方で1cm程度の差は生じますので多少の差は気にしないでください。ここでさきほどの縦10cm×幅1cmに切った厚紙の登場です。厚紙を半分に折り、綿の中央で図のようにホッチキス止めします。通常の10号針ホッチキスだと、相当に気合いを入れないと針がちゃんと通りません。もしあれば、3号針ホッチキスを使ったほうがよいでしょう。この厚紙が、型崩れ防止になります。
この綿をさらに元の綿のように3つに切ります。厚紙のついている中央の綿Bの上辺は、図のようにわざと広くしてください。これによって、綿が口から抜けるのを防ぎます。
綿を入れるときは、出したときと逆に、綿C、綿A、綿Bの順で入れます。特に綿Bは、あまりに低すぎると気化ベンジンが火口までたどりつかず、高すぎると綿と火口の触媒が接触してしまいます。写真Aの下の青い横線あたりに綿の上端が来るようにしてください。
2023年現在、最新の取替綿の説明書によると、綿の上端はタンクのクチから3mm下のところが標準の位置だそうです。
型崩れ防止用の厚紙は、ないと綿の位置がずれやすくなります。また、ベンジンを入れる前にタンクのクチを外側に向けて振って、綿が外に飛び出さないことを確認してから使いましょう。
綿を換えたら、まずベンジンを最大容量(STANDARDならカップ2杯)入れて逆さにして搾ってみます。もし、ベンジンが出てくるようなら、綿の量が多すぎか少なすぎです。念のために逆さにして少し振っても中身の綿が飛び出ないことも確認しておきます。
点火芯付A火口を使用中で、綿の交換後も点火芯付A火口を使いたい、というときは、点火芯は綿より糸で代用できます。この場合、綿A,綿Cを入れたあとに、代用点火芯を点火芯をひっかける場所にひっかけ、その後に綿Bを入れることになります。このとき、糸が型崩れ防止用厚紙の外にならないようにしてください。(綿Aと綿Bの間に代用点火芯がつくようにしてください)そうでないと、代用点火芯にベンジンがしみこまず、点火に失敗することがあります。
糸は太さ2mm程度(20号、あるいは#20という表示)のものが適合しますが、ハクキンカイロ純正品使用時と異なり、先端が非常にほつれやすくなりますので注意してください。また、同じ「太さ2mm」でも、メーカーによって太さが結構異なるようです。
綿Bが入れ終わったら、代用点火芯の先端をはさみで切ります。あまり長いと、点火時に炎が大きくなりすぎて危険です。
ただし、この太さの糸はあまり売っていません。ホームセンターのロープコーナーとかにあります。ただ、ベンジンの吸い上げがうまくかない糸があるようです。下の写真Zippo用ウィック(下の写真)がおすすめです。太さもちょうどいいです。ただし、価格はちょっと高くなります。
2024年現在374円税別程度。(サイト作者は2007年に210円で購入)。
2023年1月に、GIANT用とmini用の綿が新発売になりました。
ジャイアント用の綿のみの重量は6.5g、mini用の綿のみの重量は4.1gです。
取替綿を取り寄せずに自分で交換するときのめやすにしてください。