ハクキンカイロに対抗して、松下電器(と松下電池)が1953年に発売したのがこのカイロです。この商品のために専門子会社まで作ったらしいのですが、ハクキンカイロには勝てずに1990年代くらいに撤退したようです。
モデルはBG-302〜311までが確認されています。型番は発売順のようです。ただし、BG-301とBG-305は存在したかどうかは不明です。末期には標準(24時間)、うす形(15時間)、ミニ(12時間)の3つのモデルがありました。このほかにショルダー型(後述)もあったそうです。
BG-304新発売時は「ナショナル黄金カイロ」という名称でした、こちらの商品名のほうが多くの方には印象的だったようです。その後、商品名は「ナショナルカイロ」に変更になりました。
下の写真はナショナル黄金カイロ時代のパッケージです。下のほうには「黄金」がなくなったナショナルカイロ時代のパッケージも掲示してあります。
確認できた型は下記のとおりです。
型番 | タイプ | 時間 | 容量 | 単価 | 重量 | 備考 |
BG- | ||||||
BG-302 | 標準 | 24 | 304以降と火口が違う(が、304用も使用可) | |||
BG-303 | ||||||
BG-304 | 標準 | 24 | 16 | 17 | 62 | |
BG- | ||||||
BG-306 | 標準 | 38 | ショルダー型(背負うタイプ)。直径102mm | |||
BG-307 | うす形 | 15 | 8 | 47 | ||
BG-308 | ミニ | 12 | 6.5 | 25 | ||
BG-309 | ||||||
BG-310 | 標準 | 24 | 13 | |||
BG-311 | うす形 | 15 | 7 | 袋がピンクや黄などカラフル。 点火器柄変更。307マイナーチェンジ |
1968年には「ナショナル黄金カイロ(株)」が設立されています。(ソースはこちら)1993年に、この会社が松下電池に吸収されたときの社名は、「ナショナルカイロ(株)」でした。この頃、松下はカイロから撤退したようです。最後のモデルは1990年製との情報もあります。アフターサポート用に会社を残しておいたのかもしれません。
ハクキンカイロとは直接関係ない商品ですが、同じようにベンジンと白金触媒を使ったカイロということで、よく対比されるので紹介します。デッドストックのものがかなり市場に流通しているらしく、今のところ入手はあまり困難ではありませんでした。商品はBG-304です。恐らく1982年の製造だと思われます。
左上から右に順に、箱、説明書、計量カップ、真ん中は点火器、下は袋と本体です。
点火器はまるで電池のように見えますが、この中に単三電池を入れるしくみです。
末期モデルは点火器がNational ULTRAの柄のものもあります。
本体は3つのパーツに分かれます。左上から順に、フタ、火口、下はタンクです。タンクの中に綿が入っているのはハクキンカイロと同じです。
ナショナルはこのように、ドーナツ型のタンクの内側に、火口をはめるようになっています。
火口とタンクの内側です。綿状のものが白金触媒です。中央部に電熱線があり、これで点火しています。
タンクは内側で1箇所だけ綿が出ているところがあり、そこにカップを接触させてベンジンを入れるしくみです。
火口をはめると、タンクのこの綿の部分と火口の白金触媒部分が隣り合うようになっています。
詳しい写真はありませんが、点火器は、2番目の写真の火口の写真の左上の丸っぽい枠のところに押し付けると、電熱線が発熱して着火するしくみです。点火器はおそらくアルミニウム製で、ハクキンカイロの紙製のものよりは豪華です。もっともハクキンカイロがあえて紙製にしているのも意味があるらしいのですが。
点火器の尻についているひもの先には、点火チェッカーがついてます。
ナショナル黄金カイロ自体はよく考えられた製品ですが、このドーナツ状の燃料タンクは一体成型ができず、継ぎ目から燃料が漏れるというトラブルがあったようです。(ハクキンカイロのものも、張り合わせのモデルは同じような欠点があったようです)また、残念ながら、既に替え火口は手に入りません。(松下も、在庫していません)ハクキンカイロの替え火口の触媒部を移植すればまだ使えますが、ハクキンカイロの触媒も性能が上がっているので、高温・高消費モデルになるという報告もあります。ベンジンカップは使う気ならばハクキンカイロこはる用で代用できますし、3Rプラチナム用点火器で点火もできますので、付属品がなくなっていても今でも使おうと思えば根性で使えます。
ナショナル用純正ベンジンはナショナルベンジンという名でしたが、これは現在の「NTベンジン」(タカビシ化学)と同じもののようです。
BG-304以降はハクキンカイロのPEACOCK火口を移植できますが、それ以前の型は、火口の構造そのものがかなり違っていて無理そうです。BG-304も、初期ロットのものは移植できないかもしれません。古い火口は、点火芯A火口のようなガラス繊維でできていて、マット式になっていませんでした。
BG-302,303,304,306は火口が共通です。
松下もハクキンカイロのサンパッドに似た製品を出していました。カイロ本体と、背中にかけるパッドの組み合わせというのは同じです。ただし、この製品は松下が元祖で、ハクキンカイロのほうが後発だそうです。なおこの製品については、ナショナル好きさんから画像データを供給していただきました。
カイロ本体です。
火口です。左がこの製品の火口、右がハクキンカイロ3R用火口です。かなり大きな火口を使っていたことが分かります。明らかに専用品として作られたものでしょう。後発のハクキンカイロは開発期間がなく、点火芯付Aに巨大な穴のあいたフタをつけた高温モデルを無理やりつくって対抗したこともよくわかります。ただし、従来モデルのマイナーチェンジで対抗したハクキンカイロの高温モデルは結果的に現在でも補修部品が手に入ることになりました。
1.各モデルの比較 2.燃料及びオプション 3.非純正オプション 4.ナショナルカイロ 5.各モデル比較表
6.点火の様子 7.大正モデル 8.昭和初期モデル 9.ポケット暖 10.サンパッド
11.高温放熱型点火芯付 12.点火芯付A 13.こはる 14.コンパクト 15.ハクキンカイロA(赤函)
16.ハクキンカイロA(青函)
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